胸がキューッと締め付けられて痛くて、目頭がやけに熱くて。

頭からシャワーを被りながら、渦巻く感情を睨みつけるようにオレは目を見開いていた。




「アサヒ」


シャワーの音の隙間を縫うように聞こえてきたのは兄さんの声。

浴室の扉へ目を向けると、兄さんのシルエットが映っている。

返事をせずにそのシルエットを睨みつけていると、


「アサヒ?大丈夫か?」

また届いた心配そうな兄さんの声。


「大丈夫だよ!!」

返事をした荒い声が浴室内にグヮンと響いたが、その声はシャワーに押し潰されてすぐに静かになる。




「何怒ってるんだ、アサヒ。
 帰りが少し遅くなるのは今朝言っただろ?」

兄さんの言葉に、全身の血液がまるで逆流したかのように頭の中がカッとし、


「ウルセーよ!!
 アンタが遅かろうが早かろうが関係ねぇし!!
 つか、アンタのプライベートにオレ干渉するつもりねぇから!!」




オレは扉の向こうの兄さんに、吐き捨てるようにそう言った。




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