兄さんが、帰ってきた。


「……おかえり」

オレはテレビに目を向けたまま、ボソリと呟く。

兄さんは着ていた上着をソファーに放り投げて、手を洗うより先に台所へ向かった。


「お、今夜はカレーか。
 アサヒのカレーは俺の好物のベストスリーに入るからな」

チラリと台所を見ると、嬉しそうな顔で鍋を覗く兄さんが視界に入った。


「さぁ、早速食べ「兄さん」

「ん?」


兄さんの言葉を遮って、オレは続けた。






「オレ、誕生日プレゼント変えるよ」

「え?」


まるで状況を飲み込めていない兄さんが、慌てて台所から戻ってくる。

そんな兄さんの目を見ることなく、オレは単調な声で話し続ける。


「フードプロセッサー買って」

「アサヒ?」

「わかんない?
 タマネギを一瞬で微塵切りにできちゃうヤツ」

「いや、それはわかるけど……」

「あ、わかる?
 じゃあそれお願い。
 だから食事キャンセルね」

「そんなの気にするなよ。
 食事は食事で行けば良いじゃ……」

「プレゼント二つもいらないから!」

「?どうしたんだよ、アサヒ」

「別に!!
 とにかく食事はキャンセル!!
 オレ風呂入ってくる!!」




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