――――――――ドキッ。
(ななな、何だよ、それ)
弟相手に殺し文句言う兄貴がどこにいんだよ!
そして何またドキッとしてんだよオレ!
「ほ、他にも遊んでくれるヤツならたくさんいるだろ!
高校時代の友達とか……」
未だバクバク言っている心臓を鎮めながら半分叫ぶように言うと、
「嫌だ!アサヒがいい!」
今度は近くにあったクッションをキツく抱きしめながら駄々をこね始めた。
……兄さん、何か変なものでも食べたのか?
にしても、この光景は明らかに異常だ。
目の前にいるのが20代の大人だなんて、とても信じられない。
と言うより、信じたくない。
それでもかろうじて可愛く見えないこともないのは、その整いすぎた顔立ちのせいだろう。
とにかく……
一つだけ確実に言えることは、この姿を女子達が見たら辺りは一瞬で血の海になるだろうということだな。
………もちろん、鼻血で。
「それにしてもアサヒに彼女か……
まぁ、お前カッコ良いもんな。
彼女の二人や三人いるか」
「……………」
彼女が二人以上いるのは人としてどうかと思うぞ。
しかも、兄さんがそんなこと言っても嫌みにしか聞こえねーよ。
――――部屋の隅でイジケている兄さんを横目で見ながら、オレは小さくため息を吐いた。
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