電話に出ると、



「今日来れない?」



たった一言。



前田君はそもそも、そんなにたくさん話す人ではない。



自分から連絡先を教えたから? 



それとも単純にその外見が気になったから?



たまにかかってくる電話が嬉しくて、私は尻尾を振ってついて行く。



客として来てくれる訳でもないと言うのに。



わざわざ彼のアパートへ行き、酔った勢いでしかないであろう前田君と寝るだけだった。



一晩に何度も何度も彼は私を抱いたけれど、そこに愛の言葉は一言も無くて。



それでも愛情がない事を知るのが怖くて、私もただ無言だった。