恵里はせかせかと出掛ける準備を整え、部屋を出ようとする。
俺は恵里の細い腕を掴んで外出を阻止した。
「待てよ!」
「やっ、放して!」
「男に会いに行くのをはいそうですかって許せるかよ!」
「放せ! バカ歩!」
パチーン……
左頬に広がった痛み。
俺は放心し、掴んでいた手が緩む。
「大っ嫌い!」
そう吐き捨て、恵里は出ていった。
俺はその場にへたり込む。
ドアは乾いた音を立てて恵里と俺を隔てた。
恵里のビンタは強烈だ。
胸に響く。
大っ嫌いとまで言われてしまった。
俺はこんなにも好きなのに。
どうすりゃいいんだ。
どうすりゃ良かったんだ。
こんなことになるなら、大嫌いだと言われるくらいなら、最初から男のことなんて聞かなければよかった。



