それからも恵里は度々遅く帰ってきた。
「こんな時間まで、今日は何してたの?」
「仕事関係で、ちょっとね」
はぐらかされる度にイライラは募る。
何かを隠していることは明白なのに、それが何かはわからない。
頭にちらつくあの男の後ろ姿。
だけど脱がしてみても男と会った痕跡はない。
安心していいのか、ダメなのかもハッキリしない。
何なんだよ、マジで――……。
ある日の4限の講義終了時。
「やべ、家の鍵置いてきたっぽい」
元々忘れっぽい俺は家の鍵を忘れてしまったことに気付いた。
「マジかよ。鍵開けっぱじゃん」
泥棒が入ったかも、なんて原が脅してくるが、その心配はない。
「いや、鍵は閉まってるよ」
「は? 持ってきてないんだろ?」
それじゃあ閉めようがないと指摘してくる彼に、俺はそろそろ白状することに決めた。
「俺、女と住んでるからさ」



