窓に灯


 職場にタバコを吸う人間もいるだろう。

 これまでも同じにおいをまとって帰ってきたこともあったかもしれない。

 だけど今は、何もかもが不安材料になる。

 寝返りを打って目に入ったのは恵里の携帯だった。

 これに証拠が隠されている可能性が高い。

 ダメだ、そんなことしたら……。

 いや、でもあの男の正体がわかるかもしれない……。

 風呂からはシャワーの音が聞こえる。

 チャンス、といえばそうかもしれない。

 頭の中で天使と悪魔の葛藤が始まる。

 しかし、悪魔の圧勝だった。

 シャワーの音を確認しながら、恵里の携帯に手を伸ばす。

 答えを求めるあまり、俺は完全に落ちぶれてしまったようだ。

 手に取った彼女の携帯は生温かかった。

 そしてそれを開こうとした時。

 ヴー ヴー ヴー

 ……鳴り出してしまった。

 サブディスプレイには、

〈メール受信 相原聡美〉

 と表示されている。