恵里の言ったとおり、この日俺が帰っても部屋に灯りは点いていなかった。
暗い部屋に自分で灯りを点けると、恵里のいない寂しい部屋が蛍光灯で照らされる。
恵里は今、誰といるのだろう。
何をしているのだろう。
仕事だと言っていた。
バーゲンが近いのもわかるが、本当にそれだけか?
冷蔵庫に入れられた、俺の飯。
電子レンジで温めて一人で食しても寂しいだけだ。
……美味いけれど。
恵里が帰ってきたのはシャワーを浴びてベッドでウトウトし始めた頃だった。
「ただいま、歩」
恵里は帰るなりベッドの俺にキスをして風呂へと向かった。
なあ、恵里。
俺は見逃さないぞ。
服からタバコの匂いがしたこと。
俺もお前も、タバコは吸わないだろ。
誰のだ?
あの男か?
問い詰めたい。
ダメだ、我慢しろ。
問い詰めるにはまだ材料が少なすぎる。
それに、俺はまだお前を信じたい。



