愛の楔




―――嘘だ。美空を見た刹那、俺の全てが喜んでいた。


「っくそ、」

「――――龍さん」

「!」


ハッと膝から額を離す。


「龍さん、あたし」

「………美空」

「えっと、怒っちゃったよね……?」


勝手にこんなことしちゃって。


襖越しに美空は謝る。


「………」


何て言えば良いのか分からず俺は、沈黙を守った。こつっと何かが襖に当たる音がした。


「…………あたし、色々考えたの」


龍さんと離れてからずっと。
何が悪かったのか、どうして記憶は戻らないのか、龍さんはどうして苦しんでいるのか。


「記憶喪失になる前のあたしなら分かるのにね……」


だから、思い出せるように頑張ったんだけど、


「時々ボンヤリと思い出すの」

「!」