もういい、十分苦しんだ。


だから………忘れたままでも良いんだ。


お前が、側にいてくれるなら。





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ザザッと波が浜に押し寄せ、砂を飲み込んでいく。


「うわっ凄い凄い!!」


浜辺ではしゃぎながら波と戯れている姿を少し離れた場所で見ながら俺は口元を緩めた。


「ほら、姫サン。あんまり中にはいかないで?」

「分かってるよー澪はうるさいなぁ―……龍さん!!龍さんもこっちにおいでよ!!」


両手を一杯に広げながら俺を呼ぶ。
俺は笑みを絶やすことなく、そこに近づく。


「どうした?―――美空」

「澪が煩いーお父さんみたい」

「せめてお兄ちゃんがいいな?」

「お父さん!!」


ガクッと肩を落とす澪に俺は笑みを深める。