それに対し、俺は、何故、美空の名前を知っているのか、と追求しようと口を開き、しかし背後でチャキッと金属が擦れる音が聞こえてきて口を閉じ肩越しに振り返った。


「――――別に分からなくてもいいよ」


そこには、クスリと笑いながら折り畳み式ナイフを開いている美空の姿があった。


「美、空……?」

「驚いた?」


奴が愉快そうに笑い、美空を手招きした。


美空がゆっくりと歩き出す。


俺と美空がすれ違う。美空の顔に感情はなかった。


「美、空」

「………」


すれ違い様に手を伸ばすが、その手が美空に届くことはなかった。
美空が奴の隣に立つと、奴は美空の頭を撫でた。


「この子はね………俺のお人形さん」

「な、んだと?」

「全部芝居だったんだよ」