「あ、ここでいいです」


家の近くの駐車場に止めるように

みのりが告げる。


「雨強いけど大丈夫か?」


心配する浅井に
みのりは笑顔で頷いた。


「…また電話する」


優しい笑顔で言う浅井に…


みのりは曖昧に笑って走り出す。



家の前に着いた時、

後ろで浅井の車が走り出す音が聞こえた。



みのりはゆっくり振り向き…

走り去る浅井の車を見つめた。








…結局


『サヨナラ』言われなかった。



その代わりに…


『また電話する』





浅井さん

あたし期待しちゃうから…


優しくされたら

期待しちゃうから…



冷たく突き放してよ…




あたし…

浅井さんが好きだけど


そばにいられたらうれしいけど…





だけど


『決して結ばれない』―――…





それが…


苦しい…










浅井さん…



さっきのは



あたしの勘違い…?




『キス』の予感がしたのは…


あたしの
自分勝手な思い上がり…?







雨の音が響く中…



みのりは浅井の

あの真剣な目を思い出していた。






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