「先出てて」


浅井に言われ
みのりがお店のドアを開けた。



「うわ…すごっ」


外の天気は荒れていて
風はますます強くなり

雨も降り出していた。



「ぅおっ…

すげぇな(笑)」


後ろから出てきた浅井が驚いて笑う。


「あ、浅井さん

すみません、おごってもらっちゃって…」


「さすがに高校生に払わせられないからな(笑)

車まで走るぞっ」




走り出した浅井の後ろを走る。


浅井と一緒なら…

雨も強い風も嫌じゃなかった。



台風の暴風雨と

浅井の後ろ姿に


なんだかわくわくした気持ちを抑えながら走った。



数十メートルしか離れていない車まで走っただけなのに

車に乗った時には
2人ともびしょびしょだった。



「つめてぇ…」


「あ〜…制服が…

明日までに乾くかなぁ…」


みのりがスカートの水滴をタオルで拭く。


「明日休みになるんじゃねぇ?

これからが本番だろ」


そう言ってエンジンをかける浅井の髪から水滴が落ちる。



「浅井さん、髪びしょびしょ(笑)」


みのりが笑って浅井に手を伸ばし

持っていたタオルで浅井の髪を拭いた。





浅井が振り向いた瞬間―――…




目が合った。





浅井の車の中で

2人の時間が止まった…




30センチほどの浅井との距離に

みのりは身動きがとれなかった。



浅井も動かず…

ただ真面目な顔でみのりを見つめていた。




…何?



浅井さん…?






外の暴風雨が…


みのりの胸のドキドキを隠してくれていた。






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