ケータイを取り出して浅井の番号を呼び出した。
「…電話で終わりにします」
みのりが沙紀に背中を向けたまま言った。
それを聞いた沙紀が席を外す。
沙紀の足音が小さくなっていく。
顔を見たら…
言えない。
今じゃなきゃ…
言えない。
不思議とそんなに混乱はしてなくて…
画面をしばらく見つめた後発信ボタンを押した。
自分でもびっくりするくらいすんなりボタンが押せた。
PULL…
呼び出しが始まる。
教習中かもしれない。
そう思った瞬間…
ケータイの向こうから浅井の声が聞こえた。
大切な…
愛しい人の声が―――…
『みのり?』
浅井の声を聞いた途端に
涙がこぼれた。
落ち着いていたはずの感情が溢れ出した。
『好き』
『大好き』
『大好き』…
バカみたいにその言葉しか浮かばない。
あたしは浅井さんに何回言ったかな…
いっぱいいっぱい言ったよね…
そんなあたしを浅井さんは笑って…
でもいつも
『オレも』って返してくれたよね…
優しく笑って…
あんなに言ったのに…
まだ…
まだまだ言い足りない。
どんどん気持ちが溢れてくるよ…
「…今大丈夫ですか?」
『あぁ。
空き時間。
あと40分くらい平気(笑)
つぅかなんで敬語なんだよ(笑)
…またおしおきして欲しい?(笑)』
浅井さんの声が…
低くて甘い声が…
頭の中で響く。
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