リビングに行くとコーヒーの匂いがした。
「…いつ落としたんですか?」
「ん?
明け方一回目覚めたから」
「結構マメなんですね」
意外そうに言うみのりに浅井が笑う。
「別に普通だよ(笑)
まぁ1人だから自分でやるしかないから多少の家事はやるけど…
佐倉はなんにも出来なそうだな(笑)」
浅井に膨れながらもみのりは何も言い返せなかった。
洗濯機は使えるけど…
掃除は好きじゃないし布団干すのも面倒くさいとか思うし…
料理は…
お菓子はたまに作るけど…
包丁すらろくに使えないし…
何にも手伝ってこなかった自分を初めて後悔した。
沙紀さんは…
ちゃんと家事してたのかな…
一瞬浮かんでしまった『沙紀』の名前にみのりは頭をぶんぶん振った。
「どうした?」
コーヒーをマグカップに注ぎながら微笑む浅井にみのりは首を振った。
レンジが鳴って浅井がホットケーキを取り出す。
あっという間に出来た朝食にみのりは驚きを隠せなかった。
カフェオレにホットケーキ、昨日コンビニで買ったプリン。
「……」
手際の良さがいつもやってる事を物語っていた。
「お、りんごがあった。
むくか」
「あ、あたしやります!」
浅井の言葉に飛びつくようにみのりが言う。
少しでも良く思われたい!
そう思ったからだったが…
テーブルに並んだいびつな形のりんごがみのりを責める。
「じゃ、食おっか」
明るく言う浅井とは対称的に
みのりは落ち込んだ表情で手を合わせた。
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