その日の夕方、
浅井は教習でまた圭司の本屋の前を通った。
みのりが働いてるせいか、
それとも圭司がいるからか…
やけに本屋が目に入る。
…今日バイトだって言ってたな。
大丈夫かな…
でも突然キスしてくるような男なんか…
何してくるかわかんねぇし。
本当ならそんな場所で働かせたくない。
…オレにそんな事言う資格なんかないけど。
早く佐倉をオレだけのものにしたい。
早く『好きだ』って伝えたい。
早く…
佐倉の安心しきった笑顔が見たい。
気持ちばっかり焦って…
結局何もできないでいる。
…本気で情けねぇな。
浅井は教習を終えてからケータイを取り出した。
電話しようと思って呼び出したみのりの番号を見つめた後…
メール画面に切り替えた。
電話で声を聞いたら…
愛しさから心配が収まり切らなくなって
きっとまたみのりを悲しませるような事を言ってしまう気がした。
余計な言葉は送らなければいいメールならみのりを傷つける事もない。
大人気ない嫉妬も気づかれないで済む。
佐倉に…
嫌われたくない。
そんな気持ちがある事に少し前に気づいた。
佐倉が傷つくならいっその事…
オレから離れればいい。
そう考えることもある。
だけど…
好きなんだ。
言えないけど佐倉が好きなんだ。
女々しい自分にため息をもらしながらみのりにメールを送った。
一行の言葉の裏に
たくさんの想いが詰まったメール。
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