「…何かあった?」


浅井がみのりの手を握った。


重なった2人の手の上にみのりの涙が静かに落ちる。


「…圭司くん、何年か前に彼女が亡くなっちゃってて…

その彼女にあたしが少し似てるらしくて…」


「…うん」



「だからってわけじゃないかもしれないけど…


さっきいきなり…




キスされて…」



俯いて涙を流しながら話すみのりを優しく見つめていた浅井の表情が変わった。


泣き続けるみのりの手を離すと車のドアを勢いよく開ける。



「浅…待ってっ!」


みのりが浅井の腕にしがみついた。


「なんでだよっ?!

あいつに同情してんのか?!」


怒鳴る浅井に動揺しながら
みのりが目に涙をいっぱいためて言う。



「違うっ…

圭司くんなんか関係ないっ」


「…じゃあなんだよ」


ドアを開けたままで
みのりが手を離せばすぐにでも圭司を殴りに行ってしまいそうな浅井を

泣き顔のみのりが見つめていた。



「浅井さんと…

離れたくないんだもんっ


圭司くん、浅井さんの事なんとなく疑ってる…

結婚してるってバレたら…


もう…一緒にいられないかもしれない…」




泣きすぎて…


少しかれた声で言うみのりの言葉を聞いて
浅井の表情から怒りが消えていく。




「あた…し

浅井さんと離れたくない…

一緒にいた…」




浅井がドアを閉めて…

みのりを抱きしめた。







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