浅井の部屋は玄関から廊下がまっすぐ伸びていて
廊下の左右に部屋がある造りになっていた。
みのりが廊下の右側にある部屋に入った浅井に続く。
「遼兄、ピザは?」
「キッチンにあるだろ。
さっき届いたから。
お前働いてるんだから半分払えよな」
部屋に入った瞬間…
いつもの浅井の匂いがみのりの胸を締め付けた。
さっきまで吸っていたのか
まだ少しだけ白い煙のあがっているタバコが
机の上のシルバーのステンレスの灰皿に置かれていた。
…大嫌いだったはずなんだけどな
嫌いだったはずのタバコの匂いに
ドキドキと同時に少し安心を覚えている自分が少しうれしく感じる。
「ってゆうか、ケーキは?!
買っといてって言ったじゃん」
悟の『ケーキ』という言葉にみのりが反応する。
「オレもう27だし、いらねぇよ(笑)
つぅか、誕生日に自分でケーキ買うって…
せめておまえが用意するべきだろ。
毎年毎年手ぶらで来やがって…」
…なんか
すっごく言い出しにくいな…
やけにかさばっているケーキの包みをみのりはなんとなく自分の後ろに隠した。
「みのりちゃん、それ何?」
悟の言葉にみのりの体がすくむ。
浅井の視線も感じながら
みのりは遠慮がちにケーキの包みを机に置いた。
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