「ど〜しよう、バイト…」
「『ど〜しよう、就職試験…』でしょ?!」
学校に来るなり少しにやけながら話すみのりに祐が少し冷たい言葉を放つ。
「だって…
祐ちゃん冷たい…」
「朝から早めに学校来いなんて言うから何かと思ったのに…
来て損した…」
授業が始まる1時間前の教室にはさすがに誰もいなくて
野球部の朝練のかけ声だけが聞こえる。
「だって祐ちゃんに聞いて欲しくて…
クラス違うし帰る方向も違うからなかなか話せないしさ?」
少し口を尖らせて言うみのりに
祐が笑ってため息をついた。
「まぁ、あたしも気になってたからいいけど…
『サヨナラ言う』って話してから、みのり何も言ってこなかったから…
よっぽど落ち込んでるのかと思って心配してたし」
祐の視線がみのりに向けられたのに気づき
みのりは笑ってみせた。
「…でもホントそんな話で安心した。
どうせ『やっぱり忘れられないっ』なんて泣きつかれると思ってたから(笑)」
「確かに(笑)
あのまま振られてたら絶対そうなってたね」
自分でも想像しなかったことを
祐が心配してくれていて
うれしいような恥ずかしいような…
不思議な気分になって
みのりは照れ笑いをした。
なんだか自分が子供のように感じて恥ずかしくなり
みのりがグランドに目を向ける。
2人きりの教室を包む居心地さを感じながら
遠くで響く野球部の声に耳を傾ける。
「…やっぱジッポかな」
「どうでもいいし」
ちっとも気持ちのこもってない祐の言葉に
みのりは思わず吹き出した。
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