「遼兄〜、タオル〜」


暴風雨の吹き荒れる中
浅井の部屋を訪れたのは

山口 悟だった。



タオルを投げながら浅井が迷惑そうに口を開く。



「おまえこんな天気の中来るなよ…

つぅか毎週毎週…

おまえのおかげで火曜用事入れられねぇだろ」


「兄弟なんだから厳しい事言うなよ〜

どうせ暇だろ?
姉ちゃんいないしさ」



憎めない笑顔を向ける悟は
沙紀の弟だった。



結婚してから浅井にやけになついてきて

沙紀の出て行った今でも毎週火曜日に浅井の家に遊びに来る。


美容師をしている悟の休みが火曜日だからだった。


「相変わらず女っ気ないね(笑)

もう1年だろ?

…姉ちゃん男いるよ?

こないだ実家に連れてきて父ちゃんに怒鳴られてた」


「…へぇ」


浅井がパソコンを見つめたまま返事をする。



「…別れれば?」


悟の言葉に浅井が苦笑いする。


「…おまえが言うなよ(笑)」


聞く耳を持たない浅井に腹が立ち

悟が少しムキになって続ける。


「でも父ちゃん達だって
遼兄には申し訳ないっつってるし…

いくら事故の事があるからって誰も文句言わないよ!

何か言われるのは姉ちゃんのほうだよ!」


少し興奮して言う悟を振り返り
浅井が笑みをこぼす。


「…熱くなるなよ(笑)」


「…オレ、遼兄には幸せになって欲しいんだよ…

姉ちゃんのせいで遼兄に我慢して欲しくない。

誰かいい人探せよ…」


肩を落として話す悟に浅井が困ったように笑い

悟の頭に手を乗せた。


「…おまえの気持ちは分かってるよ。

心配してくれてありがとな。


…悟はブラコンだな(笑)」


そう言ってぐりぐり頭を撫でる浅井の手を

悟が少し赤くなりながら振り払った。






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