本を読んでいたら、突然ページがぼやけだした。

何事かと眺めている私の目の前で、ページの中央…ちょうどページの境目から、波紋が生まれた。

それは、水に潜っていた何者かが、水面の外に現れるように。

ゆっくりと出てきたそれは、人間の指先であった。

指先は見る間に第一関節、第二関節とこちらにドンドン現れ、とうとう手のひら全てが本から突き出された状態となった。

ひらひらと、こちら側を探るように艶めかしく動かされる指。

そして、やがて手首が現れ、それにとどまらず、肘部分まで、本から出てきた。

私はハッと我に返った。

(お、お帰り頂かねば!)

本を掴み、閉じようとする私。

させじと、私の腕を掴んでくる、謎の手の方(カタ)。

しばしの格闘の末、一本と両腕の差によってか、なんとか本の裏と表を掴む事に成功する私。

そのまま、乱暴に、本を閉じた。


バタン!


意外と響いたその音故か?

隣の部屋に居た妹が、私の部屋のドアを開けていた。

投げ出された、本。

突き刺さる、妹の視線。

先ほど格闘を繰り広げた舞台である所の本は、妹に無理を言って借りたものだった…。


嘘だけど。