一人掛けのデザインソファをリサイクルショップで購入した。

黒のレザーソファ。

背もたれの裏に、何故か紫色の猫模様が刺繍されていたが、裏なので問題無い。

(背もたれをあげなきゃ見えないし)

妹には無駄遣いを怒られたが、これは運命的な出会いだったのだ。

座面を満足げに私は撫でたのだった。

その後に起こる騒動も知らずに…。



ソファを部屋に置いた、その夜。

夢に、刺繍にそっくりの紫色をした猫が出てきた。

夢なので、猫が喋っても問題無い。

猫は、シキブと名乗った。

天鵞絨の毛並みが美しく、撫でると柔らかな感触が気持ち良かった。

ふと、息苦しさを感じ、夢から覚めた。

真っ暗闇の中、先程の夢と寸分違わぬ姿の猫が、私の胸の上に乗っているのが見えた。

暗闇でも、猫が紫色である事がはっきりとわかり、私は青ざめた。

血の気の引いている私に向かい、夢と同じ高さの鳴き声で、猫は暢気に『にゃあ』と鳴いてみせた。

(ああ、また妹に怒られる…)

"変なモノを拾うのは止めなさい"と言われたのは、昨日の事だ。

(もしかしたら、夢かも…)

私は現実逃避気味に、布団の中に潜り込んだのだった。

嘘だけど。