そもそも、今は夜。

(太陽とか、マジ有り得ないから)

仕事で疲れて帰ってきてこの仕打ちって、ヒドすぎ…。

大学を出て、就職して、それなりに実績をあげて、ようやく教える立場になってきたし、毎日一応、充実してる。

昔は、いつか知らない世界からお迎えが…なんて夢見ていたけど、今更来られてもこまる。

学生時代ならまだしも、ウチの生活がかかっている今、こんなアレな事に関わっていられない。

部屋で休めないのなら…。

(そうだ、ホテルにでも行こうか…)

ウチは再び扉を閉めようとした。

が。

結論から言うと、それは叶わなかった。

今まで穏やかに寄せては返していた海が、突然牙をむいたのだ。


ドアの外の廊下まで、大波が押し寄せた。それは、ウチの背丈より高い波で…。


そのまま、抵抗出来ずに波にさらわれて、ウチは、"元"自分の部屋の中へと、引き込まれて行った。

ウチの手がノブから離れるのを待っていたかのように、ドアはそのまましまり、黒々とした長方形に切り取られていた景色は、段々と消えた。

バタンと扉が閉まる音があたりに響く。

意識が有ったのは、其処まで…だった。