マルスが即位して、わずか半月後--。 『常に民の声を聞き、このウェスタの良き王となってくださいね』 最期までマルスの事を心配し、人知れずウェスタの神に祈りを捧げていたヴェローナが旅立ったのは、 地平線に朝日が覗く、明け方のことであった。 はやり病によりひと月の闘病生活を送った後、 マルス、ニュクス、そしてアニウスに見守られる中、彼女は静かに息を引き取った。 ウェスタの至宝と謳われるほどの美貌を持っていた妾妃は、 やせ衰え、見る影もないほどにやつれた姿で瞳を閉じた。