「あ、どうぞ、座って」
机に資料を置きっぱなしにしていたのに気付き、
慌てて片付けた。
私も、彼に対峙するように、座った。
「「あのっ」」
同時に、口が開いた。
「あ、ごめんね、先、どうぞ」
年下に、何故か緊張してしまった。
「榊原 実(ミノル)さん、って・・・もしかして・・・・」
「私よ、正確には、ミノリ。よく間違われるの。 でも、今回、そんなことはないと思っていたんだけどな・・・
で、どうしよう? やめとく? 女とわかったら、あなたも何かと不便でしょ?」
「あ、いえ、不便というか・・・
もう、前のアパート契約切れて、追い出されたから・・・」
「え? マジ? 少しの猶予もなかったの?」
「はい、大家さん、厳しかったんで・・・」
だから、キャリーバック持ってたんだ・・・・
ココに置いて欲しいと縋るような瞳で彼が私を見る。
「んーーーー、じゃぁ、仕方ない! 君が他のアパート見つけるまでってことでいい?」
「はい、助かりますっ!ありがとうございます!」
「部屋は、リビングを挟んで、2つずつあるわ、
こっちの部屋2つは、私の家具とかで、もう動かせないから、あっちの2つを使ってね。
キッチン・トイレ・お風呂は共同。
1つ部屋が余るけど、そこは、使わないでね。
それと、私、夜に出て朝帰る仕事なの。なるべく静かに出入りするから。」
「あ、俺も、バイト夕方から深夜なんで、大丈夫です」
「そう、じゃ、しばらくよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
ソファーから立って、彼は、私にお辞儀した。

