清算を終えて、
旅館を後にしようとすると、
「実さんっ」
振り返ると、
女将さんと、希がいた。
2人は俺たちに近づいて、
「実さん、
せっかく来てくれたのに、
何のお構いもできなくて、
ゴメンなさいね。
それに・・・
辛い思いさせたわね・・・」
申し訳なさそうに、
女将さんが、
実の手をとり、
言った。
そして、
「本当に、ごめんなさい。
ごめんなさい・・・」
希が、深く頭を下げた。
実が、希に近づいて、
「頭を、上げて、希さん
珠樹から、聞いたわ、
あなたも、辛かったのよね・・・
私・・・珠樹を愛してる。
どんなことがあっても、
それは、変わらない。
珠樹を、大切にするわ。
だから、
珠樹を・・・
私を、許してね」
希の手を握り、
優しく言う実に、
希は、俯き、大粒の涙を零した。
「実さん、
また、ゆっくり遊びにきてね。」
玄関で
女将さんが
俺たちに手を振り
2人に別れを告げ、
この地を後にした。