「珠樹、先に滑っていいよ、私、ゆっくり滑るから。
また、上がってきて、滑る時に私を見つけて」
「実っ、ダメだよっ、ヘンなヤローにナンパされたらどーすんだよっ」
午前2時過ぎまで、私を離してくれなかった彼。
当然、
私の身体は言うことを聞かない状態で…
私をこんな状態にした
等の本人は
真横でニヤリと
笑ってるんだもの…
悔しいけど
何だって許せちゃうのよね…
仕方なく
重い身体を叩き起こした。
そして、
朝食の後、すぐにスキー場へ向かって、
もう、何度目かのリフトを降りる。
ボードにブーツをセットしてる彼に、
そう言った。
「だーいじょうぶだってばっ、
それに、こんな三十路の女、ナンパする人なんかイナイわよっ
せっかく滑りに来たんだから、
珠樹にも、思う存分滑ってほしいの」
ゴーグルを外し、笑顔を彼に向ける。
「わかったよ、じゃぁ、ゆっくり滑ってろよ、すぐに追いつくから」
「うん、」
口を尖らせていた彼を説き伏せ、
絶対に無理はしないと約束して、
彼はしぶしぶ、白い斜面を下って行った。
私も、昨日、彼に教えてもらった基本の動作を思い出しながら、
斜面の端に寄ってから、滑りだそうとした
その瞬間・・・・
ドンッッ--、
と、後ろから、押されたような感覚が襲ったのと同時に、
「きゃぁっーーーっーーーーー」
バランスを崩した私は、
滑る斜面とは、別の、
立ち入り禁止区域の斜面へと、
転がり落ちた。