「一日であれだけ滑れるようになるなんて、実、凄いよ」


「そ、そうかな?、ちょっとは、形だけでもましになったかな・・・」


緩んだ表情で、私の肩を抱き寄せた。


お昼前にスキー場に到着して、
休憩を二回ほど挟んで、滑りっぱなしだったけど、

珠樹が一緒だと楽しくて、
あっと言う間に、肌を刺すような寒さの時間になった。


美耶子が手配してくれた旅館のロビーに入り、


チェックインの手続きをしに、彼はフロントへと向かった。


私は、ソファーに座り、彼の行方を目で追っていると・・・・


「珠樹・・・?」


私の視線の横から、ショートカットの若い女性が、彼に声をかける姿が目に入った。


歳は・・・きっと、珠樹と同じくらい、


この旅館の制服?らしき格好。


話してる内容は、聞こえないけど、


珠樹の表情は・・・・


どことなく、懐かしげで・・・・少し、切なそう・・・・


彼女も、物憂げな瞳で、彼を見つめて話している・・・・


ざわざわと胸の奥がかき乱される感情が湧きたち、


そんな想いを打ち消そうと、


視線を戻そうとするけど、


私の瞳は言うことを聞かなくて、


じっと、二人の様子を窺ってしまう。


時間にしたら、2、3分のことだったと思う。


だけど、私にとっては、とても長い、長い時間に感じられた。