ガチャ、ガチャ・・・ 玄関のカギが開く音、 ドアをバタンと閉めて、 靴を脱いでスリッパを履いた彼の足音が聞こえてくる前に、 私は、リビングから駆けて行った。 「おかえり、お疲れ様」 ジャケットを脱いでいた彼の傍に寄り、 背伸びをして、彼の唇に、そっと唇を重ねた。 「ただいま、実」 唇が離れ、口元を緩め私を見つめる。 そんな少しのことでも、幸せだと感じるの。 「ね、お腹空いてない? おそば、食べない?」 「いいね、食べようか」 彼が私の手を引き、 リビングまで向かった。