若い子たちで賑わうキャンパスの中を歩いていく。
美耶子の研究室は、門から遠いそう。
この広いキャンパスでは、迷子になってしまうと判断し、
美耶子に電話をかけた。
『はい、あ、実? いまどこ?』
「んー、どこと言われても・・・」
周りを見渡し、目印を探す。
「あ、カフェ?学食?が、あるかな」
『あ、それなら、そのまま真っすぐきて、突き当たりの建物の3階だからー
くれぐれも、ナンパされないよーにねぇ ふふっ』
ブチッ
反論する間もないまま、電話を切られた。
「もうっ、」
パチン、と携帯を閉じた時、
「ねぇー、おねーさーん、ひょっとして迷子ォ?」
背後から、若い男の子の声がした。
え?うそ?いきなりナンパ? そんな軽いの?この大学っ?
振り返ると、背の高い・・・メガネくん・・・・
一瞬、あの出来事を思い出し、身体が堅くなり一歩下がった。
「そんなに、警戒しないでよ、何もしないからさ」
そう言って、私との距離を保ってくれた彼。
「木村先生のところに行くの?」
「えぇ」
「じゃぁ、俺が案内してやるよ」
そう言うと、私の一歩先を歩きだした。