「実さん、聞いていいかな?」


キッチンから、私に向け、問いかける。


「んー?」


「さっきのヒトが、彼氏なんだろ?」


キッチンの冷蔵庫から、ペットボトルの水を取り出し、
リビングへと戻った市居くんが私にそれを手渡しながら言った。



「・・・・正確には・・・だった、かな・・・」


「そう・・・ プライベートなことだし、会話もほとんど聞こえなかったけど、
実さんがさっき倒れた時、真っ青になってたよ、
病み上がりだったから、って説明したら、そのまま帰っていったよ。

ね、実さん、あの人、大丈夫だったのかな?・・・」


テーブルを挟んだ向かい側で、問いかける市居くん・・・


「・・・たぶん、大丈夫・・よ・・・」


本当のところは、わからない。


わからないけれど、もう、悠二とは、会うことはない。


それは、目の前の彼に少しずつ自分の気持ちが傾いているから・・・


この想いを優先したいと思った。