「今日もひどいようなら保健室で寝てろよ?

……保健室なら欠席にはならねぇから。心配なら保健の先生には俺から話つけとくし」

「……ありがと。でも昨日よりはいいから大丈夫」


紅茶を口に運ぶ矢野に、微笑んで答える。

身体に流れ込んだ紅茶のせいか、それとも、矢野の優しさに気付いたからなのか……じわじわと身体の中が暖かくなっていくのを感じた。


「……ところでさ」


朝食のパンを食べていると、矢野が話し掛けてきた。

……すごく真剣な表情に、身構える。


「……なに?」

「おまえ、二股かけてんの?」

「は……?」


突拍子もない言葉に、身構えていたあたしからは間抜けな声が漏れて……そんなあたしに、矢野が続ける。


「いや、昨日おまえを担ごうとしてた奴がいただろ?

あいつと付き合ってんじゃねぇの?」

「昨日……? あー……ああ」


昨日の記憶を辿って、やっとその意味が分かったあたしは笑いながら答える。


「違うよ。和馬はただの幼なじみ」

「でも幼なじみの心配の仕方じゃなかっただろ。

おまえは気付いてなかったかもしれないけど、市川を抱き上げた時、俺の事思いっきり睨んでたし」

「そういう奴なんだよ。すっごい心配症で、弱ってる人を放っとけないだけ。

確かに勘違いしてる人達もいるけど……あたし、二股なんかかけないよ」