「う゛ー……最悪……」


食堂の古いテーブルに突っ伏しながら、低い声で独り言を呟く。

身体を襲うだるさに微熱。

腹痛に頭痛……今回の生理痛はかなり重い。


かろうじで食欲はあるものの、風邪の初期症状のような状態が続く事、もう3日。

……毎月毎月いい加減にして欲しい。


うなだれるようにテーブルに覆いかぶさっていたあたしだったけど、ギシギシと音を立てて階段を降りてきた矢野に気付いて、だるい身体を起こす。


啓太との事があってから数日。

矢野はあれ以来、その事を話題にはしなかった。


「あー……やべ、すっげぇ眠い……」


いつものように寝ぼけた様子で、頭を掻きながら冷蔵庫を開ける。


「あー……やべぇ。市川にペット買ってくんの忘れてた」

「……」


別に言うほどの事でもないから黙ってたけど、まだ覚えてたんだ。

しかも寝ぼけた頭で。……さすが神経質。

『あー……やべ』って口癖なのかな。

……どうでもいいけど。


呟くようにそれだけ言った矢野が、あたしの左斜め前に座る。

食堂においてあるのは、会議室みたいな長いテーブルで、席はそこ以外にもあるのに……矢野はなぜかいつもそこに座る。

あたしもいつも同じ場所に座るから、朝晩こうして矢野の左前からの横顔を覗き見るのが日課になりつつある。