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『でも、なんで寮になんか入る事になったんだよ』

『……お父さん、あたしの事持て余したんじゃない?』

『持て余したって、おまえ……』

『だって本当にそうだと思うもん。……分かんない。1回叩かれてからはあまり話さなくなったから』

『……叩かれた?』

『うん……お母さんの事を話題に出したら、なんか叩かれた。

お父さんその後すぐに出て行っちゃって、1人でいたら強盗に入られて警察騒ぎになるし、本当にその日は最悪で……それからは、それまで以上にお父さん帰ってこなくなって。

寮に入る事になったのも、生活費の事も、手紙で知ったんだ。

だから、なんで寮に入る事になったのか、あたしもよく分からない』


『あたしが邪魔だったんじゃない?』


最後、そんな言葉を笑って言った市川の顔が、昼休みの時の表情と重なる。

気を使わせない為にわざと浮かべたような、そんな笑顔……。





ベッドに入って目を閉じても浮かんでくる、市川の話と寂しそうな表情。

その内容に少しだけシンクロする自分の過去までもが浮かび上がってきて……。


一気に憂鬱になった気持ちに、手の甲を額に当てて大きくため息を逃がした。