冷蔵庫は使用自由。
だからペットボトルやらデザート系やらを入れてるんだけど……。
買ってきたものを適当に詰め込んでおくのに、なぜか翌日にはきれいに並べられていて。
それが矢野の仕業だと気付いたのは、寮に入って少し経った後だった。
最初はイヤミかとも思ったけど、別に矢野は何も言わないし、勝手にやってくれてるならあたしも助かるし。
なんだかマンネリになった恋人同士みたいな不思議な関係を、特に2人して気にとめたりはしていなかった。
『市川』
大きく名前の書かれたペットボトルを冷蔵庫に戻す。
その時、一番上の段にある、きれいに並べられた5,6個のゼリーが目に入った。
……本当に好きなんだな。
お店並みに並べられたゼリーに横目を残しながら冷蔵庫を閉めて、椅子に座る。
と、同時に、階段が軋む音が聞こえてきた。
大きなあくびをしながら食堂に姿を現した矢野に気付きながら、あたしはそのまま箸を進める。
白味噌のお味噌汁を飲んでいた時、矢野があたしの斜め前に座った。
「あー……やべぇ。昨日ペットボトル終わったんだっけ……」
独り言のように呟いた矢野の声は、寝起きのせいか少し掠れていた。
その声が、中学の頃の啓太を思い出させる。
変声期を迎えて、掠れていた頃の啓太の事を……。
また痛み出す胸に、矢野を無視してご飯を口に運ぶ。