啓太が変わっちゃった事なんて、ずっと前から気付いてた。

それでも傍にいたいと思ったのは……1人が怖かったのと、あと……、


そんな啓太を救いたい、なんていう、思いあがった気持ち。


あたしが救ってもらったから、今度はあたしが……なんて、思い上がりもいいとこだった。


「啓太は……あたしなんか、必要じゃないのにっ……」



突き付けられた現実。


啓太は、あたしを必要としてない。

大切だなんて思ってない。

……お母さんと同じように、あたしを大切になんか……思ってない―――……



矢野の足音が再び階段を上がってくる。

あたしの部屋の前で止まった足音に、目を瞑って手でそれを覆う。


「市川? 飯来てるから早く食えよ。片付けられても知らねぇぞ」


ノックと同時に聞こえてきた矢野の声。

その声に答える事は出来なかった。


「市川? ……寝てんのか?」


返事のないドアに、独り言のように呟いた後矢野が階段を下りる。



目を瞑ると、昔の啓太の優しい笑顔が浮かんで……

余計に涙が止まらなかった。