「……ばかみたい」


ばかみたい。

ばかみたい……


いつまで啓太の昔の面影を追ってるんだろう。

いつまで昔の啓太を待ってるんだろう……。


どんなに待ったって、どんなに望んだって……あの時の啓太は、もういない。

いないんだから。


あたしを救ってくれた啓太は、もういない。


もう……、いない。



それだけの事実なのに……受け入れる事が、難しい。





制服を着替えてベッドに横になった時、矢野が帰ってきた音が聞こえた。

階段を上ってきた足音が隣の部屋へと消えて……そして、すぐまた下に下りる。


その音を、天井を見ながら聞いていた。

真っ暗な部屋に、ドアのぼやけたガラスから廊下の灯りが差し込む。

細かい凹凸のあるガラスを通した蛍光灯の灯りは、思いのほか優しくて。


そんな灯りが

誰かがいる気配が……あたしの涙を自然と誘いだした。