「だって……指輪、……しかもペア……」


別に、結婚なんかを意識した訳じゃない。


だけど……

指輪のプレゼントは、他のモノとは違う意味を持っているように感じてしまって。


先生の想いの深さを表してるみたいで……

嬉しさに、言葉が詰まる。


「市川に何かプレゼントって考えたら、それしか思いつかなかったんだよ。

俺、独占欲とか異常に強いからな。

市川を縛りつけときたかったんだろうな、きっと」

「……犬みたい」

「いいな、犬。ご主人様にだけ懐く忠実な犬は大歓迎だな」

「……じゃあ犬飼えばいいじゃん」

「アホか。

本当の犬が欲しい訳じゃねぇよ」


少しふざけた会話をした後、先生はふっと笑って話を元に戻す。

そして……、さらにあたしを驚かせるような言葉をさらりと言う。


「無事卒業できたら本物買ってやるから。

それまでそれで我慢しとけな」


無造作に……

当たり前のように言われた言葉に、あたしは涙が止まるほどびっくりして。

ただ、先生を見つめていた。


そして、あどけなさが少しだけ残る先生の笑顔を見て……

呆れたように笑みを零した。