「……なんとか言えよ。
あ、とりあえず、はめてみろ。
市川が寝てる間にサイズ測ったから大丈夫だと思うけど……。
一応サイズ交換できるって書いてあった」
先生のムードをなくすような言葉にも、文句も出てこない。
いつもなら憎まれ口がいくらでも口をつくのに……。
手のひらの指輪に、すべての言葉を吸い取られてしまったように、何も言えなかった。
「あー、もう、貸せ」
思考も行動も停止したあたしから、痺れを切らした先生が指輪を取り上げる。
そして、あたしの左手を握ると、薬指に指輪を通した。
「……―――っ」
「あ、ぴったりだな。さすが俺」
「……っ、先生、これ……」
目が、薬指の指輪に止まったまま離れない。
いつもはない金属の感触に感じる違和感が、あたしに指輪の存在を実感させていた。
「……なんだよ」
目から今にも溢れそうな涙を浮かべながら指輪を見つめるあたしに、先生は笑みを浮かべる。
そんな先生に、あたしはやっと口を開く。



