「俺、最後が好きだって言っただろ?
だから、市川がみんなに祝われるまで待ってただけ」
「え……前、購買で話した時の……?
あれって、好きな食べ物だけじゃなくて……?」
「全部だよ。勝負とか競争以外全部。
……そんな事より」
じっと見つめてくる先生の視線に気付いて、あたしも視線を返す。
いつの間にか、先生がこの部屋にいる事にも違和感を感じなくなっていて、それが結構嬉しい。
優しく頬笑みながら、先生はあたしの手に何かを握らせて。
微かに重みのあるそれに、手の中に視線を落とす。
「え……、これ……」
手の中にあったのは……
いつか先生がくれるって言ってた、先生の指輪だった。
だけど、視線を移すと、先生の左手にもいつも通り指輪が光っていて。
不思議に思って、先生を見上げる。
呆然としたままのあたしの視線の先で、先生は微笑んだまま口を開いた。
「学校にはしてくんなよ? ペアだし、バレたらまずい。
つぅか、その前に取り上げられるから」
「……」



