その日はなんだか忙しかった。
昼休みには和馬が教室に来て、騒がしく誕生日を祝ってくれて。
「吉岡といい感じらしいじゃん?」
「吉岡さん、和馬に夢中だもんね」
赤くなる和馬を、諒子と二人でからかって遊んだ。
最初こそ迷惑がっていた和馬だったけど、吉岡さんの一途な想いが自分と重なる部分があるらしくて。
少しずつ二人の距離は縮んでいるように見えた。
「つぅか、あいつ、俺の意志なんか関係なしに引っ張ってくしさぁ……」
完全にリード権を奪われてる和馬に笑いながら、内心ほっとする。
今でも、和馬への罪悪感が消えた訳じゃない。
だけど、それを気にする事を和馬はきっと嫌うから。
あたしも気にしないように心掛ける事にした。
きっと、それが和馬の望む事だから。
「市川さんっ」
放課後、帰ろうとしたあたしを廊下で呼び止めたのは馬場先生だった。
馬場先生は、少し周りを気にしながらあたしに近付いて……小声で聞く。
「あの……矢野先生の部屋に女の子来たりしてる?」
「……」
1週間くらい前に、先生に言われた事を思い出して、あたしは少し考える振りをする。