「はい」


コトンと置いた茶碗の中を、先生が覗きこむ。


「あれ、ちゃんと卵粥に見えるな」

「お粥くらい作れるもん」


ちゃかす先生に口を尖らせながら、先生の斜め前に腰を下ろす。


『風邪』を引いている事になってる先生のために、わざわざ作ったお粥。

きっとポイントアップを狙う馬場先生が、夕飯の時間帯に来るとか、先生が言いだして。

促されるまま、渋々寮の狭いキッチンに立った。

……キッチンっていうか、ここの場合は台所か。


『卵粥がいい』なんて、子供みたいな事言う先生に少しおかしくなりながら作ったお粥から、湯気が上がる。


「なんだ、うまいじゃん。

おまえ、中村さんの代わりに食事作れよ」

「やだよ。っていうか、普通に無理だよ」

「あの薄いカレー、どうにかしてくれよ」


クスクス笑いながら、あたしが中村さんの作った食事に口をつけた時。

寮のドアが開いた。


「あ、矢野先生っ……起きてて大丈夫なんですか?」


先生の予想通りの時間に来た馬場先生に、少し驚いて先生を見た。

そんなあたしに、先生はにっと笑みを浮かべる。