お互いの呼吸だけに耳を澄ます。

静かな部屋で、先生に抱きついたままでいるあたしの頬に、先生が触れる。


そして、先生によって上げられた顔に、もう一度キスが落とされようとした時。

寮のドアが開く音がした。


階段を軋ませながら上がってくる足音が聞こえてきて……。

その音にあたしは先生から離れる。


あたしと先生の視線を集めるのは、ドア。

階段を上がってきた足音が、そのドアの前で止まった。


……―――そして。


コンコン、と薄いドアをノックする音が部屋に響く。

返事をしない先生を、嫌な緊張を感じながら見上げた時……。


「……矢野先生? 馬場です。

昨日、かなり酔ってたんで気になって……あの、大丈夫ですか?」


ドアの向こうから聞こえてきた馬場先生の声に、先生は小さく息を吐いた。

安堵のため息とも取れるようなそれに、困惑していると……先生はあたしの頭を自分の胸へと抱き寄せた。


「……?!」


慌てて見上げるあたしに、先生は片端だけ上げた口の前で、人差し指を立てる。