先生の匂いが充満した空気が、一気に身体中に入り込んで、胸を締め付ける。
ドアを閉めても尚腕を引く先生に戸惑いながら、部屋の中央まで連れてこられて……。
そこまで来て、ようやく先生の手が離れた。
先生に掴まれていた部分が、熱を持ったように熱い。
力強く掴まれていたせいも多少はあるのかもしれないけど……。
大きな原因はもっと内面的なモノ。
あたしは、先生の触れていた部分を右手で触れながら視線を落とす。
初めて入った部屋に、どうしていいか分からなくて。
きれいに整頓された部屋は、あたしの想像通りで、今まで寝ていたハズのベッドまで、敷き直されていた。
なんとなくベッドに向けてしまった視線。
だけど、今まで先生が寝ていた事を思うと、急に恥ずかしくなって、あたしは完全に俯いた。
「市川」
呼ばれた名前に、ゆっくりと顔を上げる。
……と。
「え、ちょっと……え、」
目の前で、逆さにされた袋から、ピンク色の飴が次々と落ちてきて……
それは、慌てて出した両手にも収まりきらずに床にも散らばった。
手の中の飴と、床に落ちた飴。
訳が分からないまま表情を歪めて、先生を見た。



