「……なんだよ」

「別に……、先生見るの、久しぶりだなーって思って」


素直な気持ちを言葉にすると、先生は動揺した様子で、あたしの頭に新聞をかぶせた。


「あっ……なに、この悪戯」

「たまには新聞でも読んでろ。

俺の顔眺めてるよりは、ずっとためになるだろ」

「もー……」


バサっと新聞をたたみ直しながら口を尖らせるあたしに、先生はふっと笑みを零す。


「読まねぇのかよ」


そのまま新聞を机に置いたあたしは、先生の言葉に、少し膨れながら笑った。


こんなに普通に話したのは、本当に久しぶりだった。

毎日会ってるせいか、短い期間でも、それ以上に感じていて……それが先生を遠ざけてた。


だから、こんな風に話せた事が、すごく嬉しくて……

胸が温かかった。


これでいいんだ、って安心した心が、今までが嘘みたいに落着きを取り戻してた。


無視する必要なんかない。


ちゃんと先生の目を見て話せばいいんだ。

ちゃんと先生と一緒に笑えばいいんだ。


生徒としてなら……

それが許されるんだ。