「あ……おはよ」


朝食を食べに食堂に下りた先生を、笑顔で迎え入れた。

最近ではあまり顔も合わせなくなっていただけに、結構な緊張があたしを襲う。


「……はよ」


会えば挨拶をするのは当たり前だし、別れてからもそれくらいの言葉は交わしてた。


だけど、今朝の挨拶はいつものとは違う。

それに気付いたのか、先生は少し戸惑ってるみたいだった。


「先生、夏休みないのって大変?」


そんな先生に気付きながら、ドキドキする心臓を落ち着かせて先生に話し掛ける。

新聞を広げた先生は、あたしの問い掛けに少しだけ黙って……そして、ようやく答える。


「ああ……まぁな。

……でも、生徒がいない分、楽でいいけどな。

教頭も心なしかご機嫌だし」

「そうなんだ」


あたしは小さく笑って……、そのまま先生を見つめる。


先生の髪とか

格好とか

顔だとか……目に映るモノ、全部を見つめる。


こんな風に見つめるなんて、別れてからは初めてだった。

そのせいか、胸の奥から先生への気持ちが溢れ出す。



温かい、好きの気持ちが……


真っ直ぐに見つめるあたしに、先生も視線を返してくれて……でも、はっとしたように、目を逸らした。

そして、少しバツが悪そうに顔を歪める。