『諒子……、あたしと先生は、こんな事になっちゃったけど……

諒子と要くんが同じ結果になるなんて限らないよ?

だから……』


別れ際、言葉を詰まらせたあたしに、諒子は何も言わずに微笑んだ。



『頑張って』

続くその言葉が言えなかったのは……

その言葉を言っていいのか分からなかったから。


諒子が待っている言葉かどうか、分からなかったから。


安易に背中を押していい恋じゃない事が、分かってたから。



『確かにつらいんだけどね、要くんと一緒にいられるだけで嬉しくなるから。

上手くなんかいく訳ないけど……要くんを好きになった事は、後悔してないんだ。

って、もう帰らなくちゃね。

お互い、微妙な心境だろうけど』


そう言って手を振った諒子に、あたしも安心して手を振り返した。


けど、諒子の後ろ姿に、心を不安が襲っていた。



『後悔』

諒子が言った言葉が、重くのしかかる。


後悔なんかしてなかった。

先生を好きになった気持を、後悔なんかしてない。


……だけど、もし、このままの気まずい状況のまま卒業を迎えたら?

もし、このままあの寮を出る事になったら?



そうなったら……

あたしは、後悔しちゃう気がした。