「やっ……ちょっと! 顔よくない?!」

「ってか声がすっごくいいっ!! え~……数学好きになりそうっ!!」


周りで騒ぎ始める女子生徒達。

……まぁ、顔はいいし騒ぐのも分かるけど。

でもなんで名前カタカナ?


黄色いざわめきの中そんな事を考えていると……不意に矢野と目が合った。

前から3番目って事もあってか、あたしに気付いた様子の矢野が自分の頬を指差す。

……なんだろ。


2回ほどつんつんと差した矢野に、あたしは表情をしかめて……ようやくその意味を理解した。

矢野が頬の腫れを気にしてくれてるって事を。


『大丈夫』、そう口を動かそうとした時。


「矢野、なんかこっち見てる!!」

「やばいって……超タイプだし。禁断いっとく?」


周りの女子からそんな声が聞こえてきて……。

なんとなく面白くない気持ちになって、そのままぷいっと矢野から目を逸らした。