「実姫ちゃん?」


はっとして振り向くと、優しく微笑む大池さんの姿があって。

その姿が、先生をダブらせる。


大池さんは、先生に少しだけ似てる。

……だけど、先生じゃない。



「……あたし、もう帰らなくちゃ」

「え?」

「ごめんなさい。遅くならないように言われてるから……諒子、帰ろ」


呼びかけると、諒子は少し戸惑いながら立ちあがってあたしに続いた。


カラオケの中のこもった空気から、逃げるように外に出る。

途端、蒸し暑くも透き通った空気が身体中に行きわたって、気分を軽くした。


「実姫? 急にどうしたの?」

「諒子だってうわの空だったくせに」


辺りはすっかり暗くなっていて、カラオケのネオンがやけに目立っていた。


そんなネオンに照らされながら、諒子が気まずそうに笑った。