先生がまだ帰ってきてないのは分かってる。

それでも……

胸が苦しく音を立てていた。



キュっと音が聞こえそうなほどに、締め付けられる胸。

そんな中、静かに先生の部屋のドアを見つめていると……不意に、寮のドアが閉まる音がした。


帰ってきた先生に、あたしは慌てて部屋に入る。

そして、背中のドアにもたれたまま、先生が通り過ぎる音を聞いていた。


ドア一枚しか隔てていない廊下を、先生が通り過ぎる。

パタンと音を立てて先生の部屋のドアが閉められて……、あたしは小さな笑みを零す。


もっと……

もっと、ちゃんと話せるハズだったんだけどな。



こんな風に避けたりとかしないで、付き合う前みたいに、ちゃんと出来るハズだったのに……

笑って話せるハズだったのに……


自分で思っていたよりもずっと大きかった先生への気持ちが、それを許さない。



先生の顔を見ちゃえば、笑って欲しいって思う。

先生の姿が目に映るだけで、泣きたくなる。

先生の近くにいると……、抱き締めて欲しくなる。



あたしだけに、

特別に接して欲しくなる―――……




……それが、いけないのに。

そんな事を望む時点で、先生と付き合う資格なんてないのに。



先生を好きだと思うだけ膨らむ独占欲。


今も大きくなり続けるそれが、胸を焦がすように痛みつける。